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「トーヤ!」
「がふっ!?」
冬弥はニーナのタックルを鳩尾に受けた。
ダメージは無い。
ただし、こみ上げる吐き気と周囲からの様々な感情が込められた視線が冬弥の不快指数を上げていく。
俺は今日、ニーナと遊ぶ約束をしていたためギルド、月の欠片へと来ている。
ちなみに、ぬこ帝装備なのだがそれには理由がある。
それは、先ほどのようにギルドに入ってすぐニーナを探す俺を油断していたとはいえ反応する事も出来ない速さでタックルをニーナかかましてくるから…ではなく。
そのタックルが特別仕様でダメージを極限まで抑えるぬこ帝装備を貫通させる程の威力があるから…でもなく。
問題はこれ。
「トーヤ!」
冬弥だ。…じゃない。
「何度も言わせるな。この姿の時は名を…と言っても無駄か。」
よっぽど楽しみなのだろう。
そわそわと、とにかく落ち着きがない。
まぁ、平常時だろうとそれは変わらないか。
これがあるからニーナが居るときにはぬこ帝装備が欠かせないのだ。
「さて、ひとまず出ようか?」
「ん?わかっぞ!」
いまだ俺の腰にしがみつくニーナ。
そんな俺達…いや、俺を見る目が、視線がそろそろウザい。
「転移。」
俺は一度ニーナの頭を撫でるとその場から転移した。
「っと、それで?行きたいところは決まったのか?」
転移したのはオルゴリア王国のほぼ中央にある公園。
今日は金曜日。
平日でありながらもそれなりの賑わいを見せている。
「……」
「なんだ?」
ニーナが俺の顔を黙って見つめていたため問う。
「トウヤの顔、久しぶりに見たぞ!」
そうかい。
俺は転移した時点でぬこ帝装備を解除してある。
今は、ジーパンに長袖のTシャツとラフな格好をしている。
対するニーナは俺が創った水色のワンピースに麦藁帽子。それと肩掛けのポーチとこちらもシンプルだが女の子らしい服装だ。
麦藁帽子とポーチはレウさんのコーディネートで彼女の趣味らしい。
そして、ニーナが言った久しぶりとは言葉の通りで、ニーナの部屋に行った時など2人きりの時は素顔で居る事も多い。
まぁ、前回の孤島では勝負もあったためぬこ帝装備だったがな。
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