6528人が本棚に入れています
本棚に追加
「へへっ、どうぞ。」
そこで、キャンキャン男が道を譲るように一歩横に下がる。
はぁ…また、面倒臭い事に…
立つ。ただそれだけ、
歩く。ただそれだけ、
魔力を練る。ただそれだけ、
ただそれだけの動作一つ一つから滲み出るこの男、アニキと呼ばれる男の強さ。
一筋縄では行かないな…
アニキがキャンキャン男の横に来た瞬間だった。
「っ!」
俺はアニキがその場から消えたような錯覚を覚えた…
「なっ!!!?」
「っ!!まお…アニキ!」
「……はぁ?」
アニキが消えた…否、その場に片膝を着きしゃがみ込んだのだ。
これには流石にキャンキャン男だけではなく右腕の男も狼狽える…まお?アニキの名前か?
かく言う俺もアニキの奇行にはどう反応すべきか…って、
「あ、アニキ…何を!?」
「ひ、拾うんですか!?おい、お前も拾え!アニキはいいですから立って下さい!拾うんなら私達が拾いますから!」
えっ…何これ?
拾うのか?
アニキはしゃがみ込んだと思ったら散らばった金板を一枚、また一枚と拾っていく。
そんなアニキの後ろから右腕の男が慌てて近づき、キャンキャン男に拾うよう指示すると自分もその隣にしゃがみ…
「お前達はせんでえぇ。男らしゅう立っときぃ。」
…込む前にアニキが止める。
「し、しかし、アニキが拾われているのに私達だけ…」
「えぇて、えぇて。男ならプライドがあるやろ?」
「しかし…くっ、わかりました。」
なんだこれ?
まじで、どういう状況?
あと、アニキの口調…
思考がまとまらない俺をよそにアニキは最後の一枚を拾うと、手に持っていた金板を一束ねにする。
「よいしょっと…やっぱ、この重さ…えぇなぁ。」
アニキは満足げな顔で立ち上がる。
これで解放されるのだろうか…
最初のコメントを投稿しよう!