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と、思ったのが伝わったのか知らんがアニキは金板を手にゆっくりと俺に近づいてくる…
「ほれ。」
「…え?」
何をしてくるのかと身構えていたのだが、アニキはなんの企みも無いような顔で束ねた金板を俺に差し出した。
「何しとんねん?はよ、受けとりぃ?」
「は、はぁ。」
罠か?
とも考えたが、やはりアニキの表情からは何も嫌なものは感じない…
「金は大事にせなあかんで?」
「あぁ、はい…」
そして、受け取ってしまった…
「ん、ほなな!」
「え、…」
アニキは金板を渡すと回れ右。
どうやら、立ち去るようだ。
「あ、あとな?言い訳がましいけど言うとくわ。」
アニキは首だけくるりとこちらに向けると口を開く。
「ワイは避けたで。嬢ちゃんのこと。」
それだけ言うとアニキは前を向き、一度も振り返ることなく歩いて行った。
その後ろを右腕の男は一度だけ俺達に小さく会釈すると後を追い、
キャンキャン男は俺をギロリと擬音がつきそうなほど鋭く睨みつけながら右腕の男に続いた…もはや、鋭いを通り越して糸みたいに目が細くなっていたが突っ込んでやる必要もないか…
「さて…」
アニキが去り際に言った『ワイは避けたで。』それが事実ならいろいろ納得出来る…だが、
「ニーナ。」
「ん?なんだ?」
振り返りながら名を呼ぶ。
ニーナの返事は普通だったが、その目はいまだ地面に落ちたコーンに釘付けだった…よっぽど食べたかったのか。
「ニーナ『も』あの男を避けようとしたのか?」
「そうだぞ!よく前を見ていなかったが、それでも確かに避けたはずなんだ!なのに、あの変な臭いの奴が横からぶつかってきたんだぞ!!」
なかなかご機嫌斜めなニーナ。
それに変な臭い…か。
まぁ、野生が強いニーナだからこそ気づいたのだろうな。
さて、2人の主張からの推測だが、
ニーナは男達に気がつき、アイスに気を使いながらも回避を試みる。
そして、アニキの方は、ニーナと同時、もしくは少し遅れてニーナと同じ方向に回避してしまったと。
ここで問題になるのはニーナの回避速度。
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