第1章

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高僧が悪僧に摩り替えられて、その行方は ようとして知れず。ただ、子守唄に残るのみ。  では。瀬戸内海周辺に名を馳せる耳なし芳一が 耳を失う前に聞いていた声は、何を訴えるのか。 沖縄では亡霊を遺念(いにん)と呼ぶ事がある。 多くの場合は怪火として、念の残る場にとどまる。  芳一の見えない、その場所へ現れるのも怪火。 芳一の想像する立派な武家屋敷(実際は墓場)に 琵琶を聴きたいと願う人々も、怪火。  知らぬは芳一ばかり。  最後まで怪火を知らぬは芳一と貴方ばかり。 そう思うと、世の灯火の儚く恐ろしい事か。 ――2014年10月13日(月)雨宿りの岩の下に記す。 知らぬ間に、私の耳から血のような液体が垂れる。 雨の雫にあらず。後ろに雨の中の火が灯る。 うふむらうどぅんぬ かどぅなかい みみちりぼうじぬ たっちょんど いくたいいくたい たっちょがや みっちゃいゆったい たっちょんど イラナんシーグん むっちょんど なちゅるわらべ みみグスグス ヘイヨー ヘイヨー なかんど ヘイヨー ヘイヨー なかんど
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