エミリー

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*** 「ごめんなさい。暗くなってしまったわ」  言われて外を見れば、雨雲の去った空は夕暮れ色だった。  そんなに長居していたのかと驚く。  何を話したか覚えていないが、他愛のない話ばかりだったような気がする。  礼を言って出ようとすると、先にドアを開けたエミリーが、緑の敷き詰められた庭の正面を指した。  薄暮のなか、つるバラの絡むアーチが見える。 「まっすぐ出れば、きっと知っている道よ」  その向こうは夕暮れに沈んで見えないのだが、来た道と似た路地のようだ。  バラの門をくぐりかけたところで、声がかかった。 「忘れ物」  渡されたのは、来るときに持っていた買い物袋だ。白いビニール袋と重さが、何だか現実を思い出させる。自然、苦い顔になってしまった。  それをのぞき込んだエミリーが、小首を傾げて笑う。 「やっぱり、道までお見送りするわ」  言って軽快にアーチをくぐって行く。
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