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また小さな後ろ姿について暗い道を歩き、木の扉を押し開ければ、街灯のついた道だった。
出た扉を振り返って見れば、ペンキが剥げて朽ちかけた木の塀と、それに同化するような木戸。
まだ先を行くエミリーを追いかけて行き、そのまま角を曲がれば、言われた通り、知った道に出た。
水路沿いにある歩行者専用の遊歩道だが、抜け道として自転車も時々通る道だ。少し行けば、以前彼女が歩いていた道へつながる。
ついこの間の筈なのに、何故かひどく昔のような気分になる。
「ねえ、見て?」
水路にかかる橋の上で、エミリーは思いついたように立ち止まった。
「地面に、星座があるのよ」
足をどけて見ると、橋に埋め込まれた小さな明かりが、何かの星座を描いているようだった。
それが何かは分からないが、楽しそうに見ているエミリーに、また目が行ってしまう。
ベルの音が聞こえて、顔を上げる。
自転車か。
道の端に避けながら、あそこがお誘いした喫茶店、と、ちいさな手が遊歩道の先を指した。
そばを自転車が通り過ぎる。
「ここまで来れば大丈夫ね」
それで帰ろうとするから、この子こそ大丈夫なのかと心配してみる。しかしエミリーは楽しそうに笑った。
「暗いのは怖くないの。夜はお星様がたくさん見えるでしょう? だから好きよ」
指された空には、本物の星が瞬き始めていた。月はまだ出ていない。
それじゃごきげんよう、と声が聞こえ、夜空から目を戻す。
そこにはもう、エミリーの姿は無かった。
驚いて見回すが、日も落ちた道には誰も居ない。闇にも映えるだろう金髪は、どこにも見えなかった。
後ろ髪引かれる心地で居たが、仕方なく一人帰途についた。
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