エミリー

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4  急な雨に、近くの軒下へ駆け込んだ。  少し大きな喫茶店の軒先。服や頭の水滴を払っていると、コーヒーの良い香りが漂ってくる。買い物袋を下ろして空を仰いでみるがまだ暗く、雨は止みそうにない。  走って帰るには降りすぎていて、どうしたものかと雨だれを眺めていると、店の扉が開いた。  あの子だ。  エミリーと呼ばれていたのを思い出す。  子供の手には大きめな包みを抱えて出て来ると、空を見上げて、まあ、と呟いた。傘も持っていないようだし、どうするのだろうか。  エミリーはそのまま数歩歩き、不意にこちらを向いた。目が合ってしまう。 「こんにちは。あなたも雨宿り?」  警戒した様子も無く話しかけられ、驚く一方、何故かこちらが気まずい。 「あら人違いかしら? 近頃よく見かけるお顔みたいなんだけれど」  気付かれていた。  後ろめたさか、ざっと背中に鳥肌が立つ。しかしエミリーは嬉しそうに笑った。 「ふふ。当たってたみたい。わたし、ひとの顔を覚えるの、得意なの」  言いながら近付いてきた。  動揺するところへ、ふわりとコーヒーと甘いクリームが香る。今日もあの幸せそうな顔で、ケーキセットでも食べてきたのか。 「あのね、雨に濡れないでおうちまで行ける抜け道、知ってるの。雨が止むまで、ご招待してもいいかしら?」  ……何だって?
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