エミリー

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 結局ミルクココアをいただいたところで、テーブルの生け花に気が付いた。 「この間習ったの。でもこのおうちにはちょっと違うでしょう? 似合う場所を作らないとね」  先日渡されていた花とはまた違うものだから、あれからまだ習っているようだ。確かに、洋風のここには少し似合わないように見える。  シンプルに活けられた花の下では、精巧な白い小鳥の置物。可愛らしいが、紫色の眼でこちらを見ているような気がした。 「ねえ」  声をかけられて目を戻す。 「よく見かけるけれど、近くに住んでるの? わたし、ここに来てまだそんなに経っていないから、お友達が増えると嬉しいわ」  見かけた限りでは、何人も友人が居るようだったが。 「そう? でもお話できるお友達は、多い方が好きよ」  そういえばお伺いしてないわ、と名前を尋ねられる。答えると何故か納得したように笑った。想像した通り、だったらしい。 「わたしは……あらご存じ? 色んな名前で呼ばれるけれど、今はエミリーがお気に入りなの」  言い方が引っかかる。あだ名か何かなのだろうか。しかしエミリーは、秘密、と悪戯ぽく笑った。 「だって可愛いでしょう?」  可愛い。  返す言葉に困って笑う。不思議な子だ。  しかし本人は曖昧な返答も気にせず、ねぇすてきでしょう?と、さっきの小鳥の背をなでている。 「あなたは、何をしているひとなの?」  訊かれてまた困る。どう言えばいいのか。
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