エミリー

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 さっきは兄を捜していたのだと答えると、 「あら。大変ねぇ」  雑談のように返されて、肩すかしをくらった気分になる。しかし彼女はそこで、名案を思いついたというように、ぱっと顔を輝かせた。 「姉様に訊いてみようかしら。わたしの姉様は、何でも知っているのよ? 知らないのは……」  言いかけて言い淀み、上手い続きが思いつかなかったのか、姉様が知らない事だけ、と言って笑った。  その調子に付き合いたくなったが、そこまでしてもらう事は無いと遠慮する。 「そう? いいえ、そうね。自分で頑張ってみることは大事だわ」  急に大人びた事を言うものだから、益々よく分からなくなる。 「でもひとを頼る事は、困ったときにはいちばん近道だと思うの。もちろんいつもでは駄目。一人でどこまで頑張れるか、知っている子だけよ」  本当に、いくつなんだろうか。  見た目通りの歳の子供は、こうもにこにこして話さないだろう。黙りこくるか、はしゃいで騒ぐかに違いない。何より、こんな正当な事は言わない。  一体、何者なのだろう。  疑問が先立ち、何をしている人なのかと問いを返してみる。  エミリーはカップを両手で持ったまま考えるように小首を傾げ、しばらくして楽しそうに微笑んだ。 「夢をみているひとよ」
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