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そうして迎えた週末。
聡介に何を食べさせてあげようかとさんざん悩んだけど、この冬一番の寒さだったこともあり結局鍋に落ち着いた。
「すげー。カニ鍋じゃん。
どしたの? これ」
「今週ボーナス貰えたから奮発しちゃった。
今夜は私の奢りだから」
「まじかー!」
久し振りにゆっくり二人で過ごす時間は穏やかだった。
聡介は鍋だけではなく私が箸休めにと作ったふわふわのだし巻き玉子やワカメとタコの酢の物も美味しいと誉めてくれた。
こうしているとわざわざ改めて本音を晒したり、間違い探しをしなくても私たちは何も変わっていないんじゃないかと思える。
でも、やっぱり食事中の話題は聡介の仕事のことだったりして、そのことが少し引っ掛かったけどそれだけで波風をたてる気もないので私は笑顔を絶やさず相づちを打っていた。
「クリスマスが終わってもさ、冬休み中はそれなりに客入るし、それが終わったらバレンタインだし。
冬って意外に忙しいんだよな」
「そうなんだ……」
「あ! でもさ、バレンタインのメニューコンセプト。俺も企画提出したら採用されたよ。
オーナーにすげー誉められた。全国でも新人が採用されたの俺だけだって」
「へえ! すごいじゃない、おめでとう!!」
「莉乃は? 最近仕事どうなんだよ」
「へ? ……私?」
満面の笑みでそう問われても答えに窮してしまう。
聡介の華々しい話の後で倉庫で一日中間違い探しをしていたなんて言いたくない。
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