51人が本棚に入れています
本棚に追加
「タイムレースにしときゃいいのに…」
「うるせー。俺はアクロバティックが専門なんだ!
これなら負けねーぞ」
コースじゃなくてパークの方にサークルメンバー全員道連れに引っ張ってきた先輩は気付いていなかったのだろうか?
大きなキッカーの前で滑稽に胸を張る先輩を鼻で笑いながら更に余裕綽々の聡介に。
本人以外、その場にいたサークルメンバーもみんな分かっていた。
こいつは滑るのが速いだけじゃなく飛べるヤツだと。
勝負なんて始まる前からついていると。
これじゃ面白くない。
分かりきった勝負に勝手に担ぎ出された私にも意地がある。
簡単に手に入るような景品にされてたまるか!
だから、私からも勝負を挑むことにした。
心配しなくていいから、と耳打ちに来てくれた聡介に素早く言い返す。
「勝手にナメたこと言ってないで。
私、あなたのものになんてならないわよ?」
「へー。じゃ、このままあの先輩に手込めにされるの?」
「空を飛んで」
「あん?」
「空を飛ぶくらい高く飛んで。私が納得するくらい。
そうしたら…………」
「ふーん。あんたはあんたで俺を挑発するんだな。面白いじゃん。
いーよ、別に。あんたが思ってるよりずっと高く飛んでやるよ。
そーしたら…………」
私たちが別の勝負を決めている間に先輩は飛んだ。
「おお!」
「なかなか……」
自分から言い出しただけあって、思ったよりは高かったしフォームも綺麗だった。
何人かのサークルメンバーは自然に歓声と拍手を送っていた。
「なるほどね…。思ったよりはやるね、あの人も」
そう言いながらキッカーに移動する聡介は、最後に私の耳元で囁いた。
「見てなよ。俺があんたのサンタになるからさ…」
最初のコメントを投稿しよう!