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「内村。この試算、顧客の生年月日違ってた」 「げ」 「げ、は俺のセリフだ。 生命保険の試算で生年月日間違えてどうする。そこは肝だろうが。 俺が顧客に説明しながら気付いたからその場で修正しといたけど、こんな初歩的なミス勘弁してくれよ、ホントに。 っつーか、お前は本当にミスが多いよなぁ」 「……すみません」 呆れ果ててる指導社員の中田さんに何度も頭を下げて受け取ったファイルを確認すれば、私が3才若く見積もってしまった試算表に大きな赤いばつ印がされていた。 中田さんの言う通り、保険試算で年齢を間違えるなんてあってはならない致命的なミスだ。 一番肝心な保険料が変わってしまうのだから。 「……本当にすみませんでした。 すぐにやり直します」 「いや、いい。顧客に説明しながらその場で作り直したから。 これ正しいやつ。ファイル差し替えといて」 「はい……」 全ての資料を受け取って席に戻る。 盛大なため息と共に椅子に座って心に浮かぶのは、大ポカを犯した自分への反省じゃなくてひねくれた疑問。 (その場で説明しながら試算出せるんなら、始めから私がこの仕事する必要あった?) 自分の失態を棚上げして不満ばかりが脳内を占めていく。 そんな自分にうんざりしてまたため息が漏れた。 ミスを繰り返しているうちに八つ当たりを覚えてしまった自分が情けなかった。
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