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暦の上ではディセンバー。
大学を卒業して、この保険会社で営業アシスタントとして働き始めて、春と夏と秋を越えて今や冬。
これだけの時間を擁しても私はちっとも成長していない。
社会人になればすぐに『普通に』働けると思ってた。
『普通に』というのは、仕事がきちんとできて会社に必要な人材になるとかそんな当たり前のレベルのことで、そんなの誰でもすぐにできるもんだと思っていた。
でも現実は全然違った。
仕事を出来るようになるためには覚えなくてはならないことがいっぱいあって、次々と与えられる課題をクリアしていかなくてはいけなかった。
ひとつ課題をクリアする度に小さな信用というアイテムが授けられ、そのアイテムをフルコンプすると漸く信頼という武器を手にすることができる。
その武器を手にして初めて必要とされる人材になるのだ。
武器を手にしない丸腰の兵隊は、少しもあてになんかしてもらえない。
『普通に』という領域に達することがこんなに大変だということを私は全く分かってなかった。
先輩社員が片手間でも完璧にできてしまうような基本中の基本であるような仕事ですらこうしてミスを繰り返す私は、まだ1つもアイテムを獲得できていない。
その証拠に。
「内村ー。
お前明日からしばらく倉庫管理に回れ。
年明けに業務監査入るって噂だからこれまでの資料全部見直ししといて。
アシスタントはしばらくやらなくていいから」
中田さんから飛んできた指示に私はがっくりと肩を落とした。
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