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「ミネストローネ作っておいた。食べる?」
「食べる!」
大学を卒業して、聡介は大手飲食チェーンに就職した。
現在は系列のイタリアンレストランに配属され、そこでサービスの基礎を学んでいる。
厨房の人とすっかり打ち解けて、最近は料理に興味を持ち始めたらしくこうして私のためにいろいろ作ってくれるようになった。
「それ食ったら送ってくから帰れよ」
「えー?!まだ来てから一時間も経ってないじゃん。嫌だよ」
「ダメ。もう結構いい時間だから。
そもそも来る時間が遅いんだよ。だからわざわざ仕事帰りにここに来なくてもいいって言ってるのに……」
サービス業の聡介は平日休み。私は週末が休日。
休みが全く被らない私たちが逢瀬を重ねるにはこうして無理に時間を作るしかない。
聡介だって分かっているはずなのに、最近毎回同じような会話を繰り返しているような気がする。
思いきり頬を膨らませた私を宥めるように聡介は私の頭を撫でて言った。
「今度の土曜日は早番だから。
莉乃が飯作って待っててよ。
そうしたら少しはゆっくりできる」
「じゃ、土曜日に来る。それで泊まってもいいよね?」
「それはダメ。日曜も俺は仕事だし」
「なんでー?!日曜の朝に一緒にここを出ればいいじゃない」
「ダメ。早番でも家でやりたい仕事もあるから」
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