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壇上では議長を務める社長が挨拶をしている。
拓真の背中まであと2メートル、そこで私は一度深呼吸した。
3歩、ゆっくりと前に進んで拓真の肩に手を置いた。そして彼の耳元で囁く。
「……拓真」
拓真は振り返り、私を見ると大きく目を見開いた。
「おいっ、お前、なんで……」
私の後ろにいる美咲を見つけたあと、私の顔を見る。椎名部長も合い鍵を持っていたことに気付いたんだろう。
「まあね」
「馬鹿っ! おとなしくしてろって言っただろっ」
慌てふためく拓真を見て、私は笑みを浮かべた。
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