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―――場所は変わり、月明かりしか光源が無い教会に、足を組んで席に座っている男がいた。
もう何十年以上も人が訪れていない、廃れた教会。
天井も一部が崩れ、ステンドグラスは割れ、柱に至っては抉れ、崩れている。
その人物は背もたれに腕を乗せ、俯いていた。
月光に映される紅の髪。
癖の強い髪をそのまま伸ばし、後ろ髪を一つに結っていた。
白の生地に、黒色のアクセントを入れたミリタリージャケットを着て、黒色のカーゴパンツを穿いている。
祭壇の上、つまりその男の正面上にある割れたステンドグラスから射す月光が、空気中に漂う埃によって光の軌跡を描いていた。
ギギィィーー…
そんな教会に、今にも留め具が外れそうな扉を開けて入ってくる人物がもう一人。
先に座っていた男は、首だけ動かして入ってきた人物を見ると、一度鼻で笑って、俯いていた頭を上げた。
「こうやって、直接顔を合わせるのは二年ぶりか?朝霧」
「いいえ、まだ一年と半年でした。…君の中の計画では、まだ私たちが顔を合わせる状況になるまで、猶予があったらしいですね」
入ってきた男は、黒のロングコートを羽織った優男だった。
ストレートの金髪に、柔和な笑みを張り付けた顔。
目は開いているのかさえ疑う程細く、目鼻立ちは結構整っていたりする。
五年前…いや、二十年以上前から容姿が変わらないその男・朝霧は、男とは廊下を挟んだ反対側の席に腰掛けた。
「彼からの伝言です。至急、円卓に顔を出せと」
「…」
「聞いてます?」
「あぁ、聞いてる」
赤髪の男は、先程と変わらない姿勢のまま、視線を上げていた。
「アイツの調子はどうだ」
「もう新しい体の慣らしは終わっていますよ。新しく入った方々も、なかなか骨があります。今まで貴方しか適合しなかった神格兵器を扱えるようになったんですから」
「結局、見つかった神格兵器は三つ…。戦力不足は否めないな」
「もとより覚悟していた事でしょう?私達みたいな狂った獣に、誰がついてくるっていうんですか」
「ハンッ。違いない」
男は組んでいた足を解き、大きく息を吐いた。
朝霧はそんな男を横目で一瞥すると、男と同じように割れたステンドグラスから覗く月を眺める。
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