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「朝田、柊と話はできたか?」
授業が終わり、部活に向かおうとしていた所を、担任の先生に引き留められる。
目が死んでる事で有名なこの担任、吉岡。 理科の講師で常に白衣を纏っている。因みに美人な奥さんも可愛い娘さんもいる。
俺としては昨日のことは無かったことにしようとしていた。実際今の今まで聞かれなかったし、寧ろさあ部活だというこのタイミングで聞くか普通?察しろ!このおっさん!
「……いや、その、留守でした」
「そうか、なら申し訳ないがまた行ってきてくれないか?」
は?いや、また来ますとは書いたものの…。
「俺が…ですよね?」
「そうだ。他に誰がいる」
「いや、その、俺が行ってもな~、っていうか」
今日も会えなかったらどうする?ここで断らなければ明日も、明後日も行かないといけない流れになるだろう。
だが吉岡もなかなか食い下がらない。
「先生も何度か行ってみたが、親御さんとしか話が出来なかった。それに、柊には親しい友人もいない。消去法でお前しか頼めない。頼む」
頼むと言われると断れない俺の性格を熟知した上での「頼む」。嫌らしいったらありゃしない。
「そもそも何でそんなに柊さんを学校に来させたいんですか?本人が来たくないから来ないんですよね?この学校で留年は珍しいことじゃないし、なら留年したって本人のせいとしか……」
「いや、留年させたくない気持ちも確かにある。だが、そうではないんだ。……あ~難しい。とにかく学校を楽しんでほしいんだよ。俺の生徒として」
本当に思ってるのかこの人は。今の言葉の全体を通して抑揚はゼロだった。せめてそういった表情ぐらい作ってくれ。
もう、自分が行く以外の展開が見えない。
「分かりましたよ……」
渋々了承し、今日も部活を休み柊の家に向かうことにした。
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