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柊 陽
読み方は「ひいらぎ ひな」。
それが彼女の名前だ。
高2の始めまでは真面目に登校していた。成績優秀、運動も出来容姿端麗。とにかく明るく良くも悪くも色んな問題に自分から飛び込んで行き、そして全力で楽しむような人物だった。
クラスは違ったが、端から見ても決して不登校になるようなタイプではなかった筈だ。
今更だが、俺の名前は「朝田輝義」。
特に特徴もない平凡な男子高校生だ。
つまりは、彼女は俺と正反対のタイプで、見ている世界も違うものだと思っていた。
…と、そんなこんなで彼女の家に着く。インターホンを鳴らす。反応なし。勘弁してくれ。
不登校の理由は知らないが、他人に迷惑をかけるような事はしてはいけないと習わなかったのだろうか。
郵便受けを見る。すると、昨日のファイルが無くなっていた。
ということは彼女はあれからこの家に戻ってきて、中身を確認してくれたということだろうか。
「また来ますって書いてたのにな…」
まぁ、来る気も更々無かったが。
昨日と同じようにファイルを投函し、さっさと家に帰ることにした。
二回も行ったんだ。吉岡も許してくれるだろう。
とはいえ、今日は風がやけに強いな。時折突風が吹き抜け、草木もしなやかに揺れている。
ショートカットしようと昨日とは違う道を通る。細いけど緩やかな下り坂だ。右側に住宅街。左側は急な斜面となっており、そこからは自分の学校も含めた町の景色が一望できる。
ここはあまり来たことのない地域だが、決して栄えているとは言えない。だが、自分の住む地域よりか、なんと言うか、風が通る。…ちょっと違うな、説明しがたい。感傷に浸れるというかなんというか…。
そんな事を考えながら歩いていたら、本日何度目かの突風が吹いた。思わず目をつぶってしまい、足を止めてしまう。
と、同時に頭上から女の子の叫び声が聞こえてきた。
「危なーーーーーい!!!」
「…………は?」
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