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「仕事、辞めようと思うの。」
彼女から電話があったのは、翌週の夜遅い時間だった。昼間は僕が仕事をしているから、と気遣って、彼女はいつも夜にかけてきた。
ただ、この日はいつもより遅かった気がする。
「辞めちゃうの?」
「うん、なんか、行けなくて。」
あのお茶会の後、シフトは入っていたし、仕事自体はあったんだろうと思う。
でもどうしても、「仕事」に行くために家を出ることができなかったのだそうだ。鞄を持ち、家を出て鍵をかけ、駅までの道のりを歩き、電車に乗る。
それを想像しただけで、身体が冷え切っていく感覚。
今まで出来ていたことができなくなったのは、お茶をしに出かけた時よりも、ずっと心に重くのしかかっていた。
「辞めて、そのあとどうする?」
「しばらく、家から出なくてもいいかなぁ。」
「充電期間ってやつ。」
「わたしもそれやってもいいのかな。」
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