第1章

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   『男を見る目がない』  そんなつもりは毛頭なかったし、そこが彼女の地雷だったなんて、言われもしなければ気づかなかった。  他人と比べると完璧主義に近い彼女は、時々他人にも「察して」欲しいと思っている節がある。すべては無理でも、今まで自分がしてきた話の中から、想像して欲しい、と心の隅で思っていた。  まぁ、本人が気づいているかはまた別の問題ではあるが。だがそれは親しい相手なら尚更自分と同じくらい相手にも気を配って欲しいと無意識下で思っているようで、地雷を踏んでしまうことは、彼女の中では僕の気配りが足りなかったのだということを意味する。    ・・・本人が自覚しているかはほんとに別の問題だけど。 「そういうんじゃないって。」 「わかってるけどもさぁ。」 「解ってても割り切れないところな。」 「それ。」  地雷を踏んだ分くらいは挽回できただろうかと内心フル回転。どうやら同意いただけたようで、彼女は紅茶にミルクをいれながら掻き混ぜるものがない、とそのまま口をつけた。  解っていても納得できない、そう思うことは誰だってあるはずだ。客観的と主観的という言葉があるように、客観的に解ってはいても、主観的にわからない、もしくは分かりたくない部分は誰でもあるし、そういうのだと割り切って諦められる人種と、そうでない人種がいて、今日の数時間でわかるとおり、彼女は後者だった。    
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