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ふと、真向かいの、
功の家が気になった。
私の部屋と功の部屋は、2階の通りに面した間取り。
なので私の部屋の窓から、功の部屋の窓は、
狭い道路を挟んで一直線で向かい合ってる。
昔はここからよく話しかけて、
うるさいって怒られたっけ。
そんなに話したいなら、
降りて玄関前で話しなさいって。
思い出して、懐かしさにふふっと笑みがこぼれた。
と、同時に今の現状がのしかかる。
確かに、そんな時もあったのにな。
私は何も変わらないのに、
周りが変わっていく。
周りの変化に合わせて、
私も変わらないといけない気がする。
周り、私の中でそれを指すものは、
まず、功だった。
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「朱莉、あんた。帰ったならただいま位言いなさいよね」
「…うん。」
「お父さん、少し遅くなるらしいから、先に食べちゃいましょ!」
ご飯を見下ろしながら、どことなく素っ気ない返事になる。
今日のメニューは、ブリの照り焼きに、だし巻き卵。茄子とひき肉の味噌炒め。胡瓜とワカメの酢の物と、赤出汁。
この中に一つ、母が上機嫌じゃないと出さない1品がある。
「何か良いことあったの?」
「え?なんでー?」
語尾を伸ばすな語尾を!!
多少噛み合わないテンションにイラッとしながら、だし巻き卵を指す。
「いつもはただの卵焼きだもん。」
「あぁー、ンフフ。
あるにはあったけど、些細な事よ。
そんな事よりも、今日のブリは美味しく出来たわよ!
食べて食べて!」
「…イタダキマス。」
「いただきまーす」
あるにはあったんだ。
それはさっきの事?とはまた別件で?
心当たりが私にはそれしかないから、其処だけが該当してるんじゃないかと変に当てがってしまう。
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