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いつもなら、誰かに合わせて行動する私。
今日は気の赴くままにやってみたい。
ちょっと強気な自分を単純だなーと感じながら、席を立つ。
「あ、朱莉、どこ行くの~?」
「うん、トイレ、すぐ戻る!」
ホントは行かないけど、行ったふりしよう。
始業チャイム鳴るまでまだあるし。
とてとてとて。
足取り早く、行き先を考える。
二階の渡り廊下は主に2年がよく使う。だから、比較的知り合いに会う確率の低い場所に行きたい。
自分を知られてるというのは、メリットでもあり、デメリットでもある。
ふと、懐かしい場所が目に入った。
1年の時にはそこのみしか使ってない、まるで新入生専用みたいにしっくりくる場所。
本館一階の職員室、保健室に1番行きやすい、渡り廊下。
ちょっと前まで毎日ここを使ってたのに。
今じゃ二階の使い勝手に慣れてしまってわざわざここまで降りて来ることもなくなった。
扉のすぐ横の壁に背を預ける。
うん。懐かしい。
前はよくここで友達を待ったりしてたっけ。
残念ながら、好きな人を待ってたとかときめく思い出はない。
でも楽しかったんだよなぁ。
女子だけの空間、女子特有の悩みの共有。
女子同士にしか解らない男子への不満。
最近は皆、彼氏や好きな人の話題で持ち切り。
その話題の時には、私は終始聞き役になってしまう。
経験も無ければ知識も、ゲームと漫画とネット小説、恋愛ブログから得たものくらいしかない。
そんな私だから、リアルな男子にときめいている皆との会話がかみ合わない。
最近はその事実が辛くなってきて、
早く自分にも、運命の出会いならぬ、
未知なる経験への出会いが巡ってきてくれと願う。
不純な動機たっぷりに、フレッシュな1年を眺めつつ、ここから登校中、職員室や保健室に、たまに何かの用事で通る、3年を本命でチェックする。
...を?
あぁあ~ すんごいいいかもあの人。後姿なのに解る。
なにあの色素の薄いサラサラの髪。どこのメーカーのを使えばそうなるの?
あ!こっち見た!
「…。」
「…。」
「…。」
「…。」
あー。。。
終了。
今日のテンション、終了。
はい、そうでした。
私には毎回こういうパターンで、やる気ゲージが下がるイベントが発生するんだった。
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