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「なにしてんの?」
「知ってる人だからとりあえず声かけてみたって、やめてくれる?」
ぶすくれた顔で早口で答えた。
とちった。
あーとちった。
さっきの淡い期待とときめきを返せ。
よりによってなんでこいつに目が行ったのか。
しかも本人に気づかないなんて。。。。
鬱。
「物欲しそうな顔して通る男をチェックしてる知り合いいたら
取り敢えず抑える意味も兼ねて声かけない?親切で。」
ギクッ。
「は?してないし」
冷めた目と口調で、的確に私を見破る功(こう)に動揺する。
うしろが壁だから、これ以上私から距離取れない。
早く行ってよ。
なんかざわざわして落ち着かない。
「ふーん。あの朱莉が男漁り始めるとはね。」
「だから違うって!(ニヤニヤすんな!)」
「いやいや、そのカーディガンが物語ってるから。」
「は?!」
「でもな、それ以前に...」
「!! ぇっ?」
髪を人差し指で一房掬われる。
「この野暮ったい髪をなんとかしたら?
俺みたいに天然で美髪じゃないんだし?」
「っどけ!このナルシスト!!」
ドンッ!!!
恥ずかしさやら怒りやら、いろいろなものが混ざって感情が沸点に達した私は、
思いっきりタックルをかまして功を押しのけた。
「ってぇ、・・・怪力女」
「うるさい、非力男。」
勢いにのってその場を走って離れる。
後ろで功が何か言った気がするけど、無視。
どうせ大事なことじゃない。
自分の教室に駆け戻る。
功は1年。
2年の私とは階数が違うから、校内で会うことは滅多に無かったのに。
なんで今日に限って。
「おかえり、あかり」
「...うん、」
ぐでっと机にうなだれる。
見かねたミワコがそばに来た。
「ずいぶん長いトイレだったね?」
「あ、あ~ははは。なんかね、混んでた...」
「そ?まぁたしかに朝のトイレなんてお直しとメイクの争奪戦だもんね。」
「うん。オーラにやられた。みんな凄いね。」
「そりゃ今の時期、相手がいない人はなおさら頑張ってるんじゃない?」
「ミワコは今年は古川くんで安心だもんね~」
「ま、一応ね~」
『キーンコーン
カーンコーン...
キーンコーン
カーンコーン』
始業チャイムがなって、まだ1限目も終わってないのに
私の疲労感が半端ないことに気づいた。
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