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「や、せっかく父さんが説明してくれてるから」
「あら、気を遣ってたの。大人になったわねえ」
言いながら、昭人の隣に座った。
「……悪いけど二人とも、父さんを……ほうっておかないで」
ガックリとうなだれる。
見事に面倒なことになった。
「ごめん。おれ、緑の声も聞いたし、思惟の姿も見たんだ。連城家当主の孫に会って、一応、そいつを手伝うとは言ったけど、連絡こねえんだ」
父親が居住まいを正した。
「いや、父さんのことはいい。昭人、よく聞きなさい。お前を知っているというハイビスカスの『浄火』を連れて、その連城広希さんが行方不明だと当主から連絡があった」
「は? でも、行方不明って広希さん、いい大人だし『美刀』って椿の守護もいるし」
「いや、守護は置いていったそうだ」
「え……っ、なんでまた?」
これは思ったより深刻な事態かもしれない、と昭人は携帯を開く。
広希からの着信はない。
以前、メールを一度送ったが、返事は来なかった。
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