1 追跡者の誕生

2/12
前へ
/102ページ
次へ
「や、せっかく父さんが説明してくれてるから」 「あら、気を遣ってたの。大人になったわねえ」  言いながら、昭人の隣に座った。 「……悪いけど二人とも、父さんを……ほうっておかないで」  ガックリとうなだれる。  見事に面倒なことになった。 「ごめん。おれ、緑の声も聞いたし、思惟の姿も見たんだ。連城家当主の孫に会って、一応、そいつを手伝うとは言ったけど、連絡こねえんだ」  父親が居住まいを正した。 「いや、父さんのことはいい。昭人、よく聞きなさい。お前を知っているというハイビスカスの『浄火』を連れて、その連城広希さんが行方不明だと当主から連絡があった」 「は? でも、行方不明って広希さん、いい大人だし『美刀』って椿の守護もいるし」 「いや、守護は置いていったそうだ」 「え……っ、なんでまた?」  これは思ったより深刻な事態かもしれない、と昭人は携帯を開く。  広希からの着信はない。  以前、メールを一度送ったが、返事は来なかった。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加