1 追跡者の誕生

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 まさかと思いつつ、相手を確認する。  広希だった。 「どんな手を使ったんだ、あの人」  携帯を持つ手が震えた。 (昭人くんお元気ですか。私はお天気です) 「ちょ……これ、何か……ツッコミどころ満載なんですけど!」  広希はメール初心者なので、手紙と勘違いしているのは理解してやってもいいが、笑いを取ろうとするほど上級者ではないはずだ。  どうやったら間違うのか、入力ミスがハマりすぎてむしろ、笑えない。 「そりゃお天気だよな、あんたの頭はいつもな……」 (幸い晴天に恵まれ、いい旅になりそうです。君の好みを聞かなかったので、おみやげは期待しないでね。広希より)  くう……、と声をかみ殺した。
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