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ため息が、口から漏れる。
わたしは、ケータイから視線を映しかえた。
「今日はいつもより少し早かったね。お母さん、ごはんは?」
「・・・・・・いらないわ」
面倒くささが言葉と一緒に放たれて、わたしの体にひしひしと伝わってくる。
「うん、ごめんね」
お母さんがリビングを出て、階段をのぼっている音がする。
キシキシと鳴るその音は、わたしの中の寂しさを増幅させた。
仕事が忙しいのはわかる。
でも、せっかく顔をあわせたんだし、少しくらいお話したいと思う。
わがまま、かな。
ハルとの電話が楽しかったぶん、今はとても悲しい気持ちが溢れている。
今度はわたしからかけてみようかな、とふと思った。
けど、さっきしたばっかりだし、ハルに迷惑だ。
ケータイをぎゅっと握りしめて、思い留まる。
ハルが、心配だと言ったことを思い出した。
弟のことでいっぱいいっぱいなはずなのに、心配をかけさせてしまった。
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