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出勤途上、舗道の端で黒猫が毛繕いをしている所に出くわした。
洋一の急ぎ足の足取りに猫は驚いてしまい、一鳴きしてその場を去ろうとする。
洋一は足取りを緩めた。
「ごめんよ。」
猫に言葉は通じていないだろう。
猫は華麗な動態で屋根へスルスルと登り、窓から部屋へと入って行った。
「飼い猫さんだったんだ、ゆっくりしてたのに悪かったね。」
洋一は猫に向けて小さく手を振り、先を急いだ。
「流石に言葉は要らないし、生き物って温かくていいな。」
アカサタの挨拶飛び交う中に、出勤する。
制服に着替え、今日も張り切って行こうと気合いを入れ、厨房に赴く。
カナタではモーニングセットを提供しているので、朝から御客は来る。
洋一は月一度の休日以外日曜日の出勤もしていて、存外に多忙である。
ただ仕事内容はもう慣れた物なので、当たり前に仕事をこなす。
休息中には夜の巣籠りの計画とて、頭の中にはタフや通教や書籍が巡る。
洋一は世間でいう堅実で真面目人間なのだ。
家路を辿れば、そこに巣籠りの世界が色濃く洋一を待ち受ける。
日々は流れた。
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