プロローグ

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するり、と書類が滑り落ちそうになって、慌てて抱え直す。 ぐしゃりと紙が音をたててしまい、室内に目を向けると彼は驚きの視線を私に向けた。 どきん、どきんといつもより強く心臓が鳴っているようだ。 胸が痛くて、痛くて。 鼻の奥がつん、として。 微かに視界が滲んだ。 気まずそうに逸らされた彼の視線にハッとなって、踵を返した。 否、返そうとした。 急に体勢を変えたせいか、高いヒールを履いた足は堪えきれずにバランスを崩した。 「きゃっ!」
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