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揺れる視界。ぐらつく身体。
これだけは守らねばと、書類を持つ手に力を込めた。
「おわっ!?」
しかし、来るべき衝撃は来ず、代わりにおかしな声と共に温もりが私を包んだ。
知らぬ間に瞑っていた目をそっと開けて状況判断するに、どうやら誰かに支えられている模様。
徐に私を支えてくれている腕の主を見上げてみると。
「神林、さん?」
まさかの同じ部署の先輩。
神林 充供(かんばやし みつぐ)が、酷く驚いた顔でこちらを見下ろしていた。
そして何を思ったか、私が先程立ち往生していた扉の向こうに目を向けて、顔を思い切りしかめた。
「・・・あいつ、」
その低い声に、肩がピクリと反応してしまう。
なんだか、凄く怒っている?
不思議に思って小首を傾げた、その時。
私の唇は意図も簡単に、目の前の男に奪われた。
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