光は見つからない

2/10
1098人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
桜が舞っている。 ヒラヒラ、ヒラヒラと風の余韻を残しながら。 雲一つない青空に、桜の花びらが舞ってどこかへと消えてゆく。 時折地面に投げ出された花びらは、幾何にも満たないその命をそこで終わらせる。 その幻想的な光景を見て、俺の心はちくり、と痛んだ。 新学期。それは心躍る季節のはず。 けれど、俺の心に突き刺さった棘は消えることがない。 消えるどころか、現実を直視せず逃げることを繰り返す度に複雑な傷になっていく。 「何回目かな…これ」 誰にも聞こえないように小さく呟いたつもりなのだが、後ろにいた会長は怪訝そうな顔をした。その綺麗な顔が、少し怪訝そうに歪められる。 ボーっとしていたから、思わず素で呟いていた。 ヤバい。ばれたらまずい。 「何か言いましたか?桜川」 よかった。聞こえてなかったらしい。まあ、聞こえていたら大変だったから、よかった。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!