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桜が舞っている。
ヒラヒラ、ヒラヒラと風の余韻を残しながら。
雲一つない青空に、桜の花びらが舞ってどこかへと消えてゆく。
時折地面に投げ出された花びらは、幾何にも満たないその命をそこで終わらせる。
その幻想的な光景を見て、俺の心はちくり、と痛んだ。
新学期。それは心躍る季節のはず。
けれど、俺の心に突き刺さった棘は消えることがない。
消えるどころか、現実を直視せず逃げることを繰り返す度に複雑な傷になっていく。
「何回目かな…これ」
誰にも聞こえないように小さく呟いたつもりなのだが、後ろにいた会長は怪訝そうな顔をした。その綺麗な顔が、少し怪訝そうに歪められる。
ボーっとしていたから、思わず素で呟いていた。
ヤバい。ばれたらまずい。
「何か言いましたか?桜川」
よかった。聞こえてなかったらしい。まあ、聞こえていたら大変だったから、よかった。
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