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埜田響也(のだきょうや)です。よろしく」 「は、長谷部真音(はせべまお)です。よろしくっ」  はあぁ、緊張するー。めちゃ緊張するー。  まさか、埜田響也くんの隣の席になれるなんて!  風光る春。最高潮の胸の高鳴りを持て余す。  奇跡的に同じクラスになれた途端に、一年の時からずっと見つめ続けてきた人とお隣さんになれました。  私立、祥徳学園。京都に本校を置き、東京には系列校と大学が揃ってる、全国的にも名の知れた進学校。その本校、高等科に外部入学して、まだ広大な敷地に慣れるのに精いっぱいだった四月。学園恒例の行事、避難訓練が行われた。  大規模地震を想定した大掛かりなもので、毎年入学月に幼稚舎から高等科までの全学年で一斉に行っているらしい。  避難指示のアナウンスを受けて廊下を歩いていたら、ちょうど隣のクラスから出てきた響也くんを見かけて、一目で目を奪われた。ずば抜けた長身、肩幅が広くて、学ランの上からでもはっきりとわかる逆三角形の体格の見事さに。  祥徳の水球部は、中高ともに全国大会常連の強豪なんやけど、響也くんは伝統あるチームで中学からレギュラーで活躍してる。  部活中の姿をひそかに盗み見てみると、背中についた筋肉がまさにどストライク。うん、筋肉は前よりも後ろがポイントよね。  彼の髪は、陽にすけると金色にも見える薄茶色の短髪。同じ色の瞳と、いつも穏やかに微笑んでいる少しタレ目の目元が、高校生離れした体格と正反対の柔らかい印象を与えている。  そして響也くんはいつも授業中だけ、眼鏡をかける。  アンダーリムの赤茶色のスクエア型の眼鏡。長身なのに、こんな比率でイイのかと心配になるくらいの小さな頭と、端整な顔だちにピタリと合っている。  授業中に避難訓練が行われたために、眼鏡着用時の貴重な響也くんとバッタリ遭遇出来たってわけ。  知的な眼鏡男子に弱い私、完全にひとめ惚れでした。
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