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真弓は、約束の時刻よりか少し早めにK出版社を訪れ、
そうしてから偉い絵描きの先生と二時間ほど話しを交えて、
K出版社を後にしたのだった。
しかし、K出版社を後にしたその足取りには軽やかさはなく、
足は重く引き摺られるようにして運ばれるのだった。
真弓はその足取りで、
四純と待ち合わせの居酒屋に、幾分早く着いて、隅の方で待っていた。
待つその表情は途方に暮れていて、眼はうつろ気味だった。
▽K出版社での回想
K出版社のドアを威勢よく開いた真弓は、
真っ直ぐにその人のところへと進んで行った。
『やぁ~~渡辺さん、しばらくじゃったねぇ』
『ぅおっ、これはこれは絵一夫人、相変わらずですね』
『あははは……夫人は止めてょ、渡辺さ~ん。
………ところでその偉い絵描きの先生とやらはどこじゃね? ご挨拶をば。
はぁ……ええっ、後ろにぃですかぁ』
真弓がくるりと振り返ると、
そこには、偉い絵描の先生とは程遠い感じのおじいさんが立っていたのだった。
▼現行
しばらくして真弓は優しく肩をたたかれ、
肩を窄(すぼ)めながら見上げた。
「……待ちましたか?
朝方は失礼致しまた、真弓さん……」
「え、あ、いいえ……」
見上げた相手は溌剌(はつらつ)とした四純だった。
▽
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