偉い絵描きさんとの再会

7/11
前へ
/11ページ
次へ
´      ▽ 『あはは……今度は画家のおじさんちねぇ。 画家の大家のおじさん、絵一の絵はどげんですか? 一点三十万じゃがですょ。ねっ、ねぇっ』 『はあっ? まぁまぁ絵一夫人落ち着いて。さぁ……そこに掛けなさい』  真弓は急くような気持ちで椅子に腰を降ろした。  渡辺はそんなようすを窺いながら立ち上がり、 『では先生、後はよろしくお願い致します。 絵一夫人、それでは後ほど』 と、真弓の肩に軽く手を添えなから、先生に会釈をするとその場から離れた。      ▼ 「ねぇ真弓さん…… ほんとうに大丈夫なのですよね……」  四純の優しい言葉は、優しい気持ちとなって、 真弓の気持ちのなかに溶け込んでいくのだった。      ▽  真弓と先生は、渡辺と会釈を交わしながら、その背を見送った。  首を元に戻した真弓は、心配気味に尋ねるのだった。 『あのぉ先生、 絵一の絵は……どげんじゃっとですか?」  先生は湯飲みを置くと、表情をしかめながら口を動かし始めた。 『………ん 彼の絵は水準以上でなぁ。 大変な努力をばした成果が見ゆる……。 うん、決して悪くはねぇがのぅ……』 『水準以上じゃですか! ほらっ、やっぱそうじゃろう先生! ねっ!』      ▼ 絵一ぃ…… 四純さんとおると気持ちが安らいでいくょ。 少しづつ……絵一のことを忘れていくような気がするがね……。 これも運命の人のチカラなんじゃろか…… 『真弓さん僕は…… 24日の、イヴの日には必ず帰ってきます……』  しだいに真弓の眼には、 真剣に訴えるそんな四純の目差ししか、見えなくなっていくのだった。 『……えっ、帰って来るぅ?  あたしには意味がよく分からんがね、四純さん……』 ´
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加