14人が本棚に入れています
本棚に追加
´
▼
「はぃ待ちます」
えいちぃ……
あたしは何のためらいもなく……返事をばしちょるょ……
その時に四純さんは……こんなあたしにプロポーズばするつもりじゃょ。
あたしにはよく分かるがね……
えいちぃ……あの樅の木の下で……あたしたちは、
相手のおらんやったあたしたちは、
毎年毎年待ち合わせばしとったね……
とても楽しかったねぇ……絵一ぃ……
▽
『趣味で終わるんなら、それでも構わんち。
じゃっどん!
この絵で飯を喰って行くんならば駄目じゃ!
彼の絵は逃げちょる。
びくびくしてびびっちょるんじゃ。
じゃかい絵に魅力が生まれん!』
『じゃ先生、絵一の絵は売れんとね、駄目じゃとね!
(絵を手にして)
絵一はこれに、心血をば注いじょるがですよっ。
絵一から絵を奪ったなら、あいつは死んだも同じなんじゃょ先生!
先生、なんとかして下さい!
先生、絵一をば生かして下さい!
もう、あたしにはどうすることも、
どうすることも出来んのですがじゃぁ!
先生、絵一をば助けっ下さい!』
『はぁ…はぁ…絵一夫人苦しぃぃ』
『先生ちぃ!』
『はぁ…はぁ……絵一夫人、手をば離して下さらんかっ…苦しいぃぃ
ゴホッ、ゴホッ』
『あぁ……ごめんなさいじゃ』
『あ、いや……
なら、絵一夫人!』
『はいっ!』
『彼の今の絵をば、全て破り捨てなさいっ!』
『えっ、……ぜんぶちぃ』
『そうじゃ全部じゃ!
そして、魅力ある個性ある、強い絵をば、創り上げなさいっ!』
▼
(彼の今の絵をば、全て破り捨てて、
そして新しく、魅力ある個性ある絵をば、創り上げなさい!)
「……真弓さん」
(破り捨てて、魅力ある個性ある絵を……)
「真弓さん……真弓さんっ」
「……え、あ、はい」
「大丈夫ですか…真弓さん……出ましょうか」
「あ、すみません……」
´
最初のコメントを投稿しよう!