chapter1 夏の日に

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「だって、ちょっと怒っててもすぐ許してくれるし、こうやってちゃんとメシ作ってくれるじゃん」 「それは、その、そういうのは、あれよ!慣れてきてるからだし!ご飯作るのは、それは、まぁ先のことを考えても当然だと思うしさ」 言葉尻がどんどん小さくなって言い終えると赤くなって俯いたままリスのようにサンドウィッチを咀嚼しだした。思わず、この小さな幼馴染を愛おしいという感情に駆られ抱き締めそうになったが、あたふたするのが容易に想像できておかしくなり、すんでのところでぐっととどまった。これもまた、長い付き合いからくる慣れ、というものなのだろうか。 軽い昼食も済ませ、俺たちは歩いてほどなく船着場へと辿り着いた。駅で暑いと感じたのも無理もない快晴で雲ひとつない。海も静かに波の音を奏で、空では海鳥たちが陽気な鳴き声をあげている。 「秋成様でいらっしゃいますかっ?」 不意に背後からかけられた声に茉里の肩がビクッと震える。これだけ活発でお転婆な姫様なのに怖いものにはからきし弱いのだ。
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