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声の方へ振り返ると、まだ二十代半ばだろうか、うら若き女性がメイド服に身を包み両手を腹部で組んで直立している。迎えの人間だな、と一目でわかる彼女に合っている意を示す。
「ええ、そうです。こっちが連れの春宮茉里です」
軽く会釈しながら言うと、茉里もちょこんと頭を下げて挨拶している。メイド服の女性は茉里を見て、小動物か何かを愛でるような優しい表情になりおもむろに口を開いた。蛇足だが小動物を愛でる気分になるのは大いに賛同する。
「初めまして、私は益志館で使用人をしている岡田光というものです!本日は益志館への案内役も兼ねておりますのでよろしくお願いしまーす!」
全く無駄のない説明なのだがこの人の人柄なのだろうか、言葉の節々に親しみやすさというか友人と喋っているような感覚を覚える。というかこの話し方でこの人大丈夫なんだろうか、バスガイドの方が向いているような気がしないでもないのだが…
こちらこそと返答し、ひとしきり周りを見渡した後、俺はふとした違和感があることに気が付いた。
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