chapter1 夏の日に

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鈴の音のような声が空気を割いて届けられる。それにしてもテンプレートのような丁寧かつシンプルな自己紹介だな。17歳ということは高校生か、遊びたいざかりだろうに面倒な世界に巻き込まれているものだ、と同情に似た想いを抱かせる。俺や茉里もそれこそ幼い頃からこのようなことには慣れっこだったため思うところはあるのだ。 「あぁ、よろしく。俺は秋成理玖だ」 自分から名乗ったくせに俺の返事にぽけーっとしている。数瞬のち、二度三度瞬きをして、ハッとした表情を見せる。 「はうぅ、では理玖さんとお呼びすればよろしいのでしょうか?」 では、って何だ。全く繋がりを見出すことが出来ないまでも特に不都合はないため、出来るだけ愛想よくニコリと笑い、それでいいよと告げる。 「ええっと、そちらの方は…」 言われるままに後ろを振り向くと、茉里が目をキラリと光らせて彼女の方へトテトテと歩いていく。表現が子供っぽいのは身長を考えて察していただこう。
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