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「むぅ、分かったわよ。けど天音島にいる間に絶対仲良くなってみせるんだからっ」
頼むからそういう情熱は他のことに向けてくれないかなぁ、という本音を他所に、はいはいどうぞご勝手にとあしらう。その直後、岡田さんが大きく手を振っているのが瞳に映り込んできた。
「そろそろ出発しますよー!!お二人とも急いでーっ!」
俺たちはいそいそと彼女らの方へ戻り、一人ずつクルーザーに乗り込んだ。最後に岡田さんが乗り込み、ほどなく俺たちの乗った小型クルーザーは岸を離れ、沖へと進み始めた。俗世とのしばしの別れを惜しむつもりはないがじっと陸地を眺めていると志穂ちゃんを送ってきた運転手が見送っているのが目に入った。彼は俺たちが会話をしている時もずっと車の傍に立ち無口、無表情を貫いていたが、今この一瞬だけは表情が歪んだ気がした。笑ったのか、苦い顔をきていたのかは分からない。だが、その一コマの景色は俺の胸に一抹の不安をよぎらせた。
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