chapter1 夏の日に

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言い訳をさせて貰えるならば、父の道重が秋成グループという金融・土建・飲食など一手にまとめた大企業の社長だからだ。これといって問題のある父親ではないのだが、政界やら財界などの集まりに連れられる度に「付き合う人間は選んだ方が良い」と自身で痛感した。それが友人の少ない理由である。 この世の中、騙し合いが絶えない、人は平気で嘘をつくからだ。…おっと脱線したな、とまぁ友人は多くないがこういうしがらみの中では腐れ縁の一つや二つ転がっているものなのだ。 「もうっ、遅い!ギリッギリもいいところじゃないの。本当、理玖は時間にルーズなんだからっ!」 案の定、怒ってるな…。 「悪い、さっき起きたばかりなんだ」 ICカードをタッチし改札を抜けるとタイムリーに電車の扉が開く。平日の昼前だからか降りる人は少ない。もっとも大学を休んでまでここにいる俺が言うのも変な話ではあるが。
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