chapter1 夏の日に

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すると俺の頭を小さな拳でコンコンと叩きながら怒り混じりに囁く。 「頭突きはした側も痛いから。…次、言ったら…しばくよ?」 俺が悪いのは、まぁ済まないとは思うのだが、こいつは…茉里はものすごく熱しやすく冷めやすいのだ。もとい、キレやすく・飽きやすい、だ。退屈はしないが、とにかく疲れる性格なのは間違いない。 ガタンゴトン…と電車は快活に道を往く。ふと、後ろ手にある窓を見やると俺たちの町が流れる景色と化し、過ぎ去っていく。神山市、決して都会ではないが田舎と言うほどではなく住みやすい。何より都心に近いので交通の面では何の不自由もない。今回、この故郷をあとにするわけだが… 「ちょっと、理玖、理玖ってば、聞いてるー?」 っと、しまった。隣のお姫様が何事か仰っている。また怒らせるのは面倒なので下僕の如く媚びへつらいますかね。 「すみません、考え事をしていたもので…。何でしょうか?」  
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