見てはいけない

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「そうだっ、お酒飲もうよ!ビールでいい?」  突然美香はそう言って冷蔵庫へ向かい、中を確認してこう続けた。 「ごめーん。1本しかなかった。ちょっと待ってて、すぐそこのコンビニで買ってくるから」 「じゃあ、私も行くよ」 「いやっ、いいからいいから。ちょっと待ってて!」  そう言って美香は勢いよく家を飛び出して行った。  一人部屋に残された私は、先程の事を思い出さないよう必死で別の事を考えていた。ただ、ふとアルバムに目がいった時、なぜだかもう一度あの写真を確認したい衝動に駆られた。  上に乗ったアルバムをどかし、恐る恐るあの写真を表に向けた。 「いやっ!!」  私はあまりの恐怖に大きな悲鳴を上げ、とっさにあの写真を窓際に投げた。投げられた写真は、閉ざされたカーテンと窓の隙間にすっと入り込んだ。  写真の女は、私たち4人を追い越し、黒髪で一瞬何が写っているのか分からない程近くまでこちら側に迫ってきていた。  その時だった。  ガタガタッ、ガタガタッ  写真が入りこんだ窓際が不自然な物音を立て、カーテンには徐々に人のようなシルエットが浮かび上がった。 「いやっ、いやっ!」  私は立ち上がることができず、尻もちをついたままのような状態で必死に後退りした。  ドンッ  その時、私の背中に何かがぶつかった。  息もできない程の恐怖の中、私は恐る恐る後ろを振り返った。 「はっ…」  そこには、あの女が立っていた。  そして、垂らした黒髪の隙間からこちらを睨みつけこう言った。 「か…え…せ……か え せ っ !!」  私は大きく息を吸い込んだ後、意識が遠のくのを感じた。
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