『切なく甘い攻撃を~入江×高杉~』

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泣きそうな顔で笑う九一に俺は、にやりと笑った。 「『お前が立ち止まるなら、俺がその手を引いてやる。だから、立て。座り込むな』」 「!?…それは、」 「ククッ、そーそー。昔の俺の言葉だな、覚えてっか?」 今では直ったようだけど昔の九一は泣き虫で、俺の後ろを歩くような奴だった。 そんな九一に俺は、手を伸ばして。 折角の綺麗な鳶色の瞳がいつも曇っていたのが気になっていて、あの日咄嗟に伸ばした手だけど。 九一は恐る恐る、でも嬉しそうに取ってくれた。 「九一、俺を信じろ」 「…し、んさく」 「自分を信じれなくてもいい。だから、せめてお前が必要だと言う俺を信じろ」 だってさ、立ち止まるなんてもったいねえだろ? 世界はこんなにも広くて、綺麗なんだから。 そう九一に向かって自信満々に笑えば、息を呑んだ九一が、次の瞬間にふにゃりと笑った。 「……晋作、ありがとう。やっぱり僕は晋作が……嫌いだよ」 「は?ちょっ、九一なにを」 綺麗に笑った九一が、近付いたままの俺の頬に優しく手を添える。 そして九一の衝撃発言に固まる俺に、ちゅっと軽く口を合わせて………って、ちょっ!? 「ん……、ぁふ……っ。」 いつの間にか俺に覆い被さるような体勢になった九一から繰り返される甘い攻撃。 ちゅっちゅっと可愛らしい音が俺の羞恥を煽る。 「…っ、九一お前っ……んぅっ!?」 抗議の声をあげようと口を開いた隙にぬるりと入り込んできた九一の舌。 「んぅ………は、ぁ……」 絡めた舌を離して、上唇を甘噛みし、また舌を差し込まれる。 上顎を舌先で擽られる度背中がゾクゾクと震え、舌を絡められる度クチュリと響く音が思考を奪う。 混ざり合う唾液を必死に飲み込みながら、長いそれに俺は段々と意識を持っていかれて。 「……んぅ………く…いちっ!」 僅かに唇が離れた隙に酸素を取り込んでも、すぐにまた口を覆われて苦しくなる。 頭がくらくらする。 「……も、もぅ……やめ……ろ…っ。」 息苦しくて、頭が溶けてしまいそうで、力の入らない手で九一の肩を押した。 「……っ……はぁ……っ。」 そうして漸く解放されて大きく息を吸い込んだ。
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