『切なく甘い攻撃を~入江×高杉~』

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荒い息を吐き出しながら必死に息を整えていれば、囁くように九一に名前を呼ばれる。 同時に強い視線を感じて目を開くと、俺を見下ろす九一と視線が絡まり心臓がドクンと大きく脈打った。 うっとりと細められた目。 情欲に濡れた瞳は強い光を放ち、俺の視線を捉えて放さない。 「……はは……えろいね…」 再び身を屈め、吐息が唇にかかるほどの距離で小さく呟かれた声が、鼓膜を震わせる。 お前のせいだろって言ってやりたいけど、間近にある妙に切なげな瞳に引き込まてしまっている今、反論する言葉は出てこなくて。 ただそのゆらゆらと揺れる瞳を見つめ返す事しか出来なかった。 「……ほんと、晋作は馬鹿だよ……僕なんか、振りほどけばよかったのに…」 ぼそりと呟かれた言葉に反応するよりも早く、九一が俺の着物の合わせ目に手を掛けた。 「九一!?お前なにを…」 「…ん?別になにもしないよ。ただ、跡を残そうかな…って」 ―――晋作は絶対に僕のモノにはならないし、なってほしい訳ではないんだけど、せめてこれくらいは場に流されたとか軽い気持ちで赦してくれない…? 勝手な僕の、ただの子供じみた我が儘だよ。 固まったままの俺の着物を少し乱した九一が、ゆらりと首もとに顔を落として。 ビクッと身体を揺らした俺の背中をぽんぽんと宥めるように撫でながら、ゆっくり唇を俺の肌に近付けた。 「……っ……九一…」 最初に鎖骨を吸い上げた唇は、ゆっくりと首もとを辿りながら赤い痕を残していく。 吸われるチリっとした痛みの後には、まるで跡を舐めとるように舌先が擽る。 優しく触れていく唇に、触れられた箇所が痺れて。 強い快感を与えるものじゃないのに、身体が疼いた。 「……ふぁっ…九一やめっ……ぁっ……」 「……ん?僕は晋作に跡をつけてるだけだよ?それだけも駄目?嫌だった?」 「…っ、意地の悪いこと言うんじゃねえ…!お前なら俺の言いたいことくらい分かってんだろうが…」 「……………ふふっ、うん、そうだね。晋作のことなら、僕は自分のことよりも知ってるつもり」 離れてほしくて、でも九一に寂しい顔をさせたくなくて。 九一を窺いつつそっと離れようとすれば、九一が俺の頬を優しく包み込んだ。 「ごめんね、最後にもう一回だけさせて?」 そう笑って優しく俺に触れた唇は、甘くて切なくて――――何故だか少し、胸が痛んだ。
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