君の瞳に恋してる

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君の瞳に恋してる

コンコン という音に思わず右を向けば、隣のクラスの女子がまるで戸口をノックするかのように下駄箱を叩いていた。 僕の学校の下駄箱は、今時レトロな木製の戸付きで おかげさまでまだ下駄箱にラブレターを突っ込む文化も健在だ 彼女は、ノックの後少し置いてからはごく普通に 靴を取り出すと少し潰れた踵を踏んで昇降口から去っていった なんだろう? 横目で彼女を見送りながら自分の下駄箱の蓋を引くが 開かない 力を込めて再度引く が、やはり開かない と、先ほど彼女が コンコン と蓋を叩いていた様を思い出す。もしかして立て付けの悪い戸と同じで、叩くと開いたりするんだろうか 僕は体育館横の木製の引き戸を思い出し、彼女と同じように コンコン と下駄箱を叩いた 「入ってまーす」 急に響いた、高い声 幼い少女の声に僕は辺りを見回すが、昇降口には僕一人で 右を見て左を見て、もう一度前を向いた とはいえ、靴が無ければ帰れない 僕は空耳と決め込むと、下駄箱の蓋のツマミをクルクルと回した。 粗雑な作りのそれは、クルクル回せばネジがとれる。 そうして出来た穴から中を覗く と 目があった 「覗きなんて、いけないんだー」 キャッキャッっと笑う声が穴から漏れだし、段々とけたたましい笑い声に変わる 頬を、冷たい汗が通りすぎるのを感じながら 僕は靴を諦めた コンコン という音がした 見れば、隣のクラスの図書委員が、まるで戸口をノックするかのように下駄箱の蓋を叩いていた 耳を済ませば あちこちで音がする コンコン コンコン コンコン コンコン 「入ってまーす」 誰かが、靴を諦めて帰る。今日も、そうであるらしい 誰もが口をつぐみ 理由は問わない
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