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前略、天井間近より
何で学校の体育館の天井ってのは、ボールが挟まっているんだろう
残念無念の文系人間の僕は、バレーボールを追うクラスメートを斜めに見送ってから
ステージに腰かけて天井を見上げた
…全部で6個か
バレーボールにバスケットボール、なんだか見慣れない色の奴は、クラブの持ち物だろうか
ずぅっとあそこに挟まって、見下ろしてるなんて暇だろうなぁ
なんて、僕がその6つのボールに感情移入しているとコートの中から声がかかる
「一回くらい試合に出ろよ!」
残念無念の文系人間たる僕は、溜め息を1つついてコートに入った
「運動出来ないとこも可愛いよね」
という声がしたが嬉しくはない。案の定狙われていくつかのサーブが飛んできて
畜生!
と、半ばヤケクソにとあるサーブに手を伸ばした
予定通りの大暴投で、真っ直ぐ跳ね上がったボールは、敵も見方も口を開け見上げるほどの跳躍力で天井に向けて飛んで
天井に挟まったとあるボールの横を掠めて、真っ逆さまに落ちてきた
と、静まり返った体育館に歓声があがる
「スッゲ!今の飛びすぎじゃね!」「やべー、あのまま天井に挟まるかと思った」「ちょ、怒られる!」
等と騒ぎ立てる。
かくいう僕自信も
「天井のボールに当たったら完璧だったのになぁ!」
と興奮に声をあげれば
「高さはあったけど場所がちげぇよ」
という笑い声と共に背を叩かれ
僕は弾けたように真上を見上げた
何を言っているんだ…?
見上げた真上の天井には確かに1つ、ボールが挟まっていて
僕のボールが掠めたはずのそれが確かにあった
だって、あそこにあるじゃないか…
呆然と見上げていると、ぐちゃりっ…っとぬかるみの泥を踏み荒らすような音がして
頭上のボールの一部が引き裂け爛っ…と光った
それはもうボールではなく真っ黒な塊で、ミシミシと引き裂けた裂目は僕を見下ろす血走った目が1つ
冷や汗が頬を掠めて動けないでいると
耳元かと錯覚する程にはっきりと声がした
『あ タ ラ なく…て
良 かッタ なァ…?』
視界の中で、天井に挟まったそれが、半月型に目を細めて
『当たっタ ラ…
“交代” ダった ノニ なァぁ…?』
と、付け足しニヤニヤ、ニヤニヤと嘲笑っているのが見えた
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