第1章

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「明日はどうするんですか?」 「明日は帰ります。 午前にちょっと磐越西線でも撮れたらいいですね」 「私も連れて行ってもらっていいですか?」 すっごく驚いたように彼が目を見開く。 ずうずうしすぎたか。 磐越西線のSLにも心惹かれたのも本当だけど…… 「いいですよ。家まで送りましょうか?」 「うちは埼玉ですけど」 「私は神奈川なんですよ」 遠いな。この距離。 もしかしたら、遠距離恋愛になるのかな? 家まで送らせるって、なんか、彼を利用する女みたいでいやだ。 「福島の駅までいいですよ」 「撮影場所は高速の近くですので、そのままインター乗るんで」 城崎さんは困ったように言って 「じゃあ、高速途中で降りてください」 「ええええええ」 ケンカしたカップルみたいなことを言わないで~~。 聞き耳を立てていたオジサン達が笑う。 「たしかにどこかで降りるぐらいなら、高速で降ろしたいな」 「じゃあ、家までお願いします」 憮然として、私は答えた。 意地悪を言った城崎さんはオジサン達とまだ笑っていた。
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