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光が窓から差し込んでいた。どうやら時間は朝らしく心地よい温かさの日差しがほほを撫でるように優しく顔を照らした。そんな朝の日差しで彼、鏑木優馬は目を覚ました。ゆっくりとした様子で起きるとまだ覚めない目をこすりながらしばらくぼぅっとしていた。だが、彼はそこで違和感を感じた。
「あれ?…俺はいつベッドで寝てたんだっけか?」
確か昼休みに入り食事を済ませたあと屋上でうたた寝をしてて、そこに幼馴染みの美咲が来たような気がしたが記憶はっきりとしない。最初は寝ぼけているのか回らない頭だったが、だんだん脳みそが働きだしその違和感が確かなものになってきた。そもそも朝というのがおかしい。いくら眠ってしまったとしてもさすがに朝まで寝ることがあるだろうか?それに今自分が寝ているのはベッドの上だ。屋上で寝てしまった自分を誰かが運んでくれたのか?いや、起こすこそすれどそんな面倒なことはしないだろう。それにベッドがある保険室か宿直室はこの広大な魔術学園でも1階にしかない、そこまで運ぶのはさすがに無理だ。それに寝かされている部屋も見慣れた保険室でも宿直室でも、ましてや学生寮の自室でもなかった。レンガ作りの壁に照明器具のない木製の天井、部屋の中にはベッドと洋服タンスのようなものと小さい机と椅子が置かれているだけでそれ以外のものは無かった。電気製品はおろかコンセントのようなものもなかった。
「ここはどこだ?俺はいつからここに?」
時間をあたりを見回しても時計らしきものもない、と、鏑木はハッと自分の持ち物が気になった。財布は鞄に入れたままにしてしまっていたが携帯と学生証は持っているはずだった。 携帯を見れば時間と日付が分かるはずだ、それに外への連絡も取れるかもしれない。鏑木は自分が誘拐されたかもしれない可能性を考えていた。
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