307人が本棚に入れています
本棚に追加
人は死んだら何処へ行くの?
なんて歌詞の歌があったっけ。
確かスリーピースバンドのミディアムバラードだったはず。
残念ながら僕にはその答えはわからないけれど、どうやら高校生は、死んだら花に取って代わられるようだ。
真っ白い花に。ユリの花に。
うちのクラスだけかな?
三年A組の教室には、いたたまれない空気がただよっていた。
古典の朱川先生は、いつもと変わらない、日本語と思えないような呪文を唱えている。
「・・・眠れない源氏は、手習いのように書くんです。『うつせみの、身をかへてける木のもとに、なほ人がらの、なつかしきかな』これは、セミが殻を脱ぐように、衣を脱ぎ捨てて出ていった・・・」
舌っ足らずにもたつくスローなしゃべり方は、波打つようなリズムと相まってクラス中を眠りに誘う。
このラリホーがよく効くんだ。
からくも呪文からまぬがれた生徒たちは、思いおもいの時をすごしている。
机の下に手を入れているやつらは、たいていスマホをいじっている。
最初のコメントを投稿しよう!