五百円玉の行方

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里山先生を連れて体育館倉庫前に戻ると、馬場園くんが熊にでも出会ったかのように驚いた。 「お、馬場園。なにやってんだ、こんなところで。おまえ、バスケの練習どうした」 慌てて、直立不動の姿勢になる彼。 額には冷や汗が吹き出ている。 「はいっ。今日はっ、体調が悪いのでっ、休ませていただきましたっ、ですっ!」 「先生、それより、僕、お金落としてしまって。このドアの向うにも隙間から転がって行っちゃったみたいなんです。ドアの鍵を開けていただけないでしょうか」 これが僕のドアを開ける作戦だった。 だが、そこまで言って、僕の配慮が欠けていることに気づいた。 人気のない体育倉庫前で、茶髪ヤンキーの馬場園くんがそばにいて、真面目で影の薄い僕がお金を落としたと言ったら・・・想像できる状況はひとつだ。 「馬場園っ! おまえ、カツアゲしたな!」 里山先生が早合点するのも無理はない。 必死で事情を説明して、先生に納得してもらうまでには、だいぶ時間がかかった。 カツアゲなんかされてない、ただ話している最中に財布からお守りを出そうとして、間違えてお金を落としてしまっただけなんです。 何度も繰り返し、ふたりとも冷や汗をかきまくって、ようやく鍵を開けてもらえることになった。
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