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ふくらはぎの傷口は、絆創膏を三重に貼った。
「そのとき、お母さんに相談はしなかったの?」
「ああ、なんか後ろまたいところがあってな。いや、後ろみたい・・・」
「後ろめたい、でしょ」
馬場園くんの話ぶりは、万事この調子で、いっこうに先に進まない。
だから、ここから先の話も、彼から聞いた話を僕が再構成してお送りする。
自分の身体の異変に気づいた馬場園少年は、病院に閉じ込められるんじゃないかとか、人体実験材料にされるんじゃないかとか、極度な不安にかられ誰にも話せなかったという。
そして、翌々日。
ふくらはぎのかさぶたが痒くてかゆくてしかたなかった夕食後、家に一本の電話がかかってきた。
お母さんは電話口でなにやら話すと、慌てて新聞を開いた。
すごい形相で紙面をめくり、ある記事を目に止め、そのまま新聞に覆いかぶさるように突っ伏して号泣した。
子供ながらに、見てはいけないものだと感じて、自室で布団をかぶった。
お母さんの鳴き声が聞こえないように。
深夜、お母さんの鳴き声が止んだあと、静かにリビングに戻り、ゴミ箱に丸めて捨ててあった新聞を拾って見た。
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